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橋下流の魅力は?課題は? 市長就任から半年、識者の声橋下徹氏が大阪市長に就任してから19日で半年を迎える。賛否様々な議論を巻き起こした政策や政治手法をどう評価すべきか。何が人々を引きつけるのか。そして、浮かび上がった政治家としての課題は――。今回は識者3人に聞く、インタビュー特集「考・橋下流」をお届けします。
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■「よい意味で変節の政治家」 北川正恭さん(早稲田大大学院教授)
大阪府知事を任期途中で辞め、大阪市長選に打って出るのは、普通の感覚であればあってはならない。その禁じ手を凌駕(りょうが)して成功させてしまった。これは政治家としてのすごい資質だと認めざるを得ない。
そして、なぜ彼がここまで成功してきたかと考えるとき、「場面転換」をするということ、つまり妥協、変節する政治家であるということが見逃せない要素だと私は考えている。
もちろん、それはよい意味でのこと。彼はバーンと打ち上げ、まじめにやっていながら、「これはまずいね」となったら潔く引く。引き際を心得ている。だから、ここまでもってきたとも考えられるし、有権者もそうした現実路線を支持しているのだと思う。
ただ、国政進出を視野に入れたいま、事情は変わってきている。これからは不易というか、変わらない信念と理念を確立できるか、持ちえるかが問われる。一党を起こし国を担う気概があるのなら、本当にすべきことを信念に従ってやっていくということが求められるのは当然だろう。
橋下さんは「決定できる民主主義」というフレーズをよく口にする。国政で決定できない状況があるから、決定できるとすごくかっこうよく見える。けれど、実際の政治は二者択一で割り切れるものではないという苦労の中で成り立っている。そこを突破するには、理念・信念しかない。
「ベンチャー」は一時の反動で伸びるときがある。まさに橋下さん、維新の会は、中堅企業へと脱皮する試練のときなのだろう。
国のエネルギー政策に対し、二者択一のような形を持ち込んだことは、彼の判断ミスだった。それでもこれから重要な場面にたくさん出くわし、堪えうれば、総理の座につくことも不可能ではないと思う。(聞き手・藤生明)
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きたがわ・まさやす 44年生まれ。早大大学院公共経営研究科教授。三重県議、衆院議員をへて三重県知事。03年4月退任し、現職。専門は公共経営論。
(続く・・・)
(続き)
■「偏る政策避ける計算高さ」 新藤宗幸さん(千葉大名誉教授)
保守ともリベラルともとらえることができない特異な政治家だ。こういうタイプはこれまで、中央、地方政界を見渡してもいなかったのではないか。
もっとも、基本的には保守的な考えの持ち主なのだろう。全職員を対象に労働組合活動や政治活動への関与を問うアンケートをした問題は、組織の規律強化を目指す保守的な考え方と言える。全教職員に君が代の起立斉唱を義務づけた条例制定も同様だ。
また、憲法を改正しやすくするために改正の要件を緩和することを主張しており、自民党など保守層が主張してきたことと重なる。
一方で、脱原発や15歳以下の子どもの通院医療費の無料化や妊婦健診の拡充、待機児童解消策など、リベラルな印象を与える政策も目立つのが特徴の一つ。
都構想については、明治期から続く強固な中央集権体制を崩して地方のことは地方で決められる仕組みづくりを目指す点では一見リベラルに見える。ただ、大阪という地域に都知事という強大な権力者を置き、新たな集権体制を築くという意味ではむしろ守旧的ととらえている。
歴史認識など意見が割れている問題にはあえて踏み込もうとしないのも特徴だ。たとえば、憲法9条の改正の是非についても「国民投票に委ねる」として自らのスタンスは明確にしていない。
次の総選挙で国政に打って出ることを考えた場合、橋下氏や、自らが代表を務める大阪維新の会には、組合や財界といった既成の強力な支持基盤がない。既成政党と渡り合おうと思えば、保守もリベラルも関係なく老若男女から幅広い支持を得なければならない。透けて見えるのは、あえてイデオロギーが偏る政策や発言を避ける、橋下氏らしい計算高さだ。(聞き手・小河雅臣)
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しんどう・むねゆき 46年生まれ。千葉大名誉教授。専門は行政学、政治学。著書は「異議あり!公務員制度改革」「概説日本の公共政策」など。
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■奉仕させる改革者に喝采 石田英敬さん(東京大大学院教授)
世の中に深刻な閉塞(へいそく)感が漂ういま、既成政党の政治家たちが打開策を示せていない。政権交代以降、鳩山、菅、野田と次々に首相が交代し、マニフェストに掲げた公約も紙くず同然となった。東日本大震災と福島第一原発事故への迅速な対応ができずに、政争を繰り広げる。政党政治が見捨てられ始めている。
閉塞感の原因を人々は、壮大な無駄遣いと既得権、官僚支配、働かない政治家、事実を伝えようとしないメディア――などにあると考えている。橋下氏が具体的に何をやれるか疑問でも、「少々危なっかしいが、少なくとも駄目なものを一掃してくれることだけはやってくれるはずだ。創造のための破壊が必要だ」という期待感が広がっていると考えてよいだろう。橋下待望論は、政党政治が機能不全から脱しない限り当面続きそうだ。
橋下人気を読み解く別の鍵が「市民の消費者化」だ。消費者化した市民は、公務員をはじめとする既得権者を、デパートやコンビニの店員と同様に限りなく顧客へのサービス提供に努めるべき存在とみなす。
そんな市民にとって、市職員への服務規律強化を進める橋下氏は、身分が保障された公務員の自由を制限し、市民に奉仕するよう求める改革者に映るのだろう。自分たちの代弁者としてふるまう橋下氏の言動から「気分としての報酬」を得られるため、拍手喝采を送っている。
橋下氏は常にテレビや新聞、自らのツイッターなどを駆使し、有権者の意識を知ることに力を注ぐ。多くの有権者の意識を自らの主張に取り込み、発言することで世の中に受け入れられているに過ぎない。本心が見えにくく、どこに人々を連れていこうとしているのか、未知で危険な側面を備えており、注意が必要だ。(聞き手・小河雅臣)
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いしだ・ひでたか 53年生まれ。東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授。メディア論。著書は「現代思想の地平」「記号の知/メディアの知」など。
(朝日新聞デジタル 6/15)
保守とかリベラルとか書いてる方がいますが・・・
今時、政治家をどちらかに分類しようとする考え方は、如何なものかと思うのですが・・・
橋下さんを応援するブログをやっている立場ではありますが、石田氏の言われてる事が一番ニュートラルな分析の様に感じました。
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まとめtyaiました【橋下流の魅力は?課題は? 市長就任から半年、識者の声】
引用橋下流の魅力は?課題は? 市長就任から半年、識者の声 橋下徹氏が大阪市長に就任してから19日で半年を迎える。賛否様々な議論を巻き起こした政策や政治手法をどう評価すべ…