夏野剛氏:慶応大政策・メディア研究科客員教授。ドコモの「iモード」を開発、ドワンゴなどIT企業取締役を兼ねる。
維新についても賛同して応援してくれています。
私的には全く同感です!!
(3/15付朝日新聞・逆説進化論より引用)
「試行錯誤を恐れてはいけない」 夏野剛氏人も組織も自らを変えることが実は得意ではない。昨日と同じように今日を生き、明日も生きられれば、楽だからだ。新しい試みは一人ひとりがなにがしかの努力をしなければならないし、組織内の摩擦も起こる。しかし21世紀になって、立ち止まっていては激しい環境変化の中で滅びてしまう時代になった。
日本の社会も同様である。新しい試みには期待もあるが、抵抗も根強い。
例えばネット選挙。投票所にわざわざ行かなくてもいいし、若者の投票率も上がるかもしれない。投票所に行くのが難しい、介護を受けたり入院したりしている人も投票しやすくなる。そういう効用があるのに、政治の場やメディアで議論されると、「パソコンが使えない人は困る」「なりすましや重複投票が横行し、信頼度が落ちないか」などの問題点をあげつらう。結局、問題がありそうだから、導入は慎重に、となる。
しかし、指摘される多くの問題点は解決可能だ。情報技術(IT)に疎い人のためには投票所を残し、投票用紙でも投票できるようにすればいい。なりすましが横行するという意見はそもそもおかしい。今でも投票所入場券を持参すれば、厳しい本人確認もなく投票できる。他人になりすますのは可能だ。ネット投票ならば個人に割り当てられたID番号を入力して投票することになるが、重複投票は不可能だから今の投票所と同じレベルと言っていい。ネット選挙で不正な投票が増えるのではないかという見方は少しおかしい。(続く…)
(続き)
薬のネット販売の解禁議論でも同じような反論があった。「ネットを使えない人は薬が買えなくなる」「安全性が保てるか」といった意見だったが、すべてがネット販売になるわけではない。従来通り薬局で買う人は買える。ネット販売ではどこの誰がどの薬を買ったかを追跡できるので、今より安全性が高まる面もある。新しい試みに対して、問題点を挙げて抵抗する意見が流れを決める現状を変えてゆかねばならない。新しい試みの多くは人や組織の選択肢を増やすことにつながっている。ネットを使うと、過疎地でも質の高いおもしろい授業が受けられ、へき地でも専門医の診察を受けられる、という風にだ。従来通りにしたい人からその自由を奪わないのだから、強く抵抗することはないはずなのだ。夫婦別姓制度なども選択肢を増やすだけで、別にすべての家族が別姓にはならないのに、なぜ「家族制度が崩壊する」と反対するのだろうか。
新しい試みは今を全否定しているのではなく、新しい選択肢の提示と捉えるべきなのだ。やってみて問題があるなら改善すればいい。良ければ広めればいい。試行錯誤を繰り返すことで社会は進化するのだから。(引用ここまで)