政治の「風」 選挙の「風」
この風の正体について、橋下さん取材記事が載りました。
(追記)インタビューノーカット版
「民意の風」吹かすのは壁の提示能力 橋下徹さん:朝日新聞デジタル
(耕論)「風」の正体 橋下徹さん、大嶽秀夫さん:朝日新聞デジタル
首都の選挙は、その時々の政治状況によって、勢力が大きく変わってきた。23日に告示される東京都議選は、小池百合子都知事が率いる新党「都民ファーストの会」が注目されている。ときに、政治を左右する民意の風。なぜ、選挙で風が吹くのか。その正体とはなにか。
■「壁」に挑む姿、見せられるか 橋下徹さん(前大阪市長)
「風」を頼りに一定の政治勢力を築いたという自負のある僕だから言い切れますけど有権者の風を的確に捉えることなどできません。追い風と思えば一瞬にして逆風になる。「風の正体」をもっともらしく分析しても無駄ですよ(笑)。
ただ、こんなに難しい民意の風でも、実体験上その姿をおぼろげながら感じたところがあります。
まずは、相手や現状に対して有権者が不満を増幅させているときに、自分の方に支持が来る。政権交代は野党が積極的に評価されるというよりも、与党が不評を買ったときに起きる。そのチャンスを捉えるしかない。時の運です。
重要なのは、多くの有権者が変えたいと思う「社会の壁」を政治家が提示し、壁を乗り越えようと挑むことです。口先だけではだめ。死にもの狂いで行動する。
壁の背後には自分たちの利益を守るために壁を支えている人たちがいる。壁に挑めば、その人たちは必然的に敵となります。敵を設定して打ち負かすことをポピュリズムと批判する人がいるけれど、それは政治の否定ですよ。政治の本質は敵との対立です。
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政治家に求められる一番の能力は、有権者が共感してくれる社会の壁を提示できるかどうか。教科書もノウハウもありません。はっきり言って勘です。あらゆる人生経験や勉強、報道などを通じた情報収集を基に、自分の感覚で提示していくしかない。この壁の提示能力の優劣が、風を吹かせることができる、できない、につながっているのは間違いない。
大事なことは、壁を乗り越えようと挑む「姿勢」です。民主党政権にはそれが見えなかった。鳩山由紀夫さんは沖縄の普天間基地移設問題で「最低でも県外」と言いました。実現が難しくても、外務省・防衛省の幹部を総入れ替えにしたり、予算を止めたりして満身創痍(まんしんそうい)で挑む姿勢が必要だった。
一方、安倍政権は挑んでいると思います。平和安全法制にしてもテロ等準備罪にしても、反発が出るのは挑んでいるから。憲法改正も挑んでいるんですよ。賛成反対があっても国民全体では許容範囲内ということだと思います。それを超えたら大逆風が吹きますよ。
民主主義のルールの中で壁を乗り越えようとすれば、壁を支える人たちの代表である議員を乗り越えないといけない。大阪市役所をなくして東京23区のような特別区をつくる大阪都構想は、大阪市議会議員の身分がなくなるわけだから、身分を守りたい人たちと話し合いで解決しようとしても無理なんです。突破しようと思ったら反対する議員を替えるしかない。
僕が大阪府知事時代に大阪維新の会を立ち上げたときは「二元代表制の軽視」と批判の嵐でした。議会のチェック機能が果たせなくなると。では、オール与党型の自治体で二元代表制は機能していますか。していないですよ。ポイントは、何のために政党を作るのか目的を明確にすることです。
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小池さんは昨年の知事選とその後しばらくは強烈な追い風が吹いた。舛添要一・前都知事に対する有権者の不満がたまっていたところへ、豊洲市場の壁、東京五輪の壁を示して挑んだからです。いまはどうか。豊洲市場も東京五輪も現段階では議員を入れ替えなければ挑めない壁ではない。都民ファーストの会をつくって何の壁に挑もうとしているのかが見えなくなったので、風は弱まっている。
民意をバカにすれば必ずしっぺ返しを食らう。最近のポピュリズム批判は、為政者が民意を操れることを前提にしている点で有権者への最大の侮辱ですね。賢(かしこ)ぶるメディアも共感を得られませんよ。
民意の風は権力に対する最大の歯止めでもあります。風の正体が分からないからこそ民主主義っていうものが機能するんじゃないですか。風を完璧に読める人がいたら、それこそ独裁者が誕生しちゃいますよ。(聞き手・工藤隆治)
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はしもととおる 1969年生まれ。弁護士。2008年に大阪府知事、10年に大阪維新の会代表、11年に大阪市長。大阪都構想が住民投票で否決、15年に市長を退いた。
■善悪強調、逆風で評価ガラリ 大嶽秀夫さん(京都大学名誉教授)
どういう時に風が吹くのか。
風の原動力となるのは、政治にあまり関心がない大都市圏のサラリーマン層、そして若者たちです。無党派層の大きな固まりを、わかりやすい争点でいっせいに振り向かせることで強い風が起きます。風が吹きやすい状況を生みだすのがポピュリズムです。
日本のポピュリズムは争点を単純化して、本来は利害調整の場である政治の世界を善と悪の対決の場に仕立てる手法です。都知事の小池さんも都議会自民党を都政改革の抵抗勢力に見立て、都議選に向けて対立候補を擁立しています。まさにポピュリズムと言えます。どっちが勝つかという話だから、観客としてスポーツ選手を応援する感覚にも似ている。何よりも抵抗勢力と闘っている政治家は格好いい、頑張っているというイメージが有権者にはあるんです。
ただ、強い風を起こすポピュリストの存在の基礎には、リクルート事件などに端を発した1990年代以降の既存政党への不信があると思います。その意味で、既存政党の総裁である安倍晋三首相は、「一強」と言われますが、ポピュリストではないでしょう。
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そもそも政治学者の私がポピュリズムを研究しようと思い、分析対象にしたのは小泉純一郎元首相です。非常に短く、鋭い言葉で大衆の心をつかむのが上手でした。自民党総裁になった際、「自民党をぶっ壊す」と訴えた。自民党の政治家がそんなこと言いませんよね。何が国民に響くのかを非常に意識していた政治家でした。
郵政選挙で刺客を送り込む構図をみても、物事を「感情化」して「単純化」するという大衆受けのする手段の使い方がうまかった。ただ小泉氏のように高い人気を得た政治家は、ポピュリストと呼ばれるのを嫌がるでしょう。自分から世論に近寄る「大衆迎合」ではなく、自らが風を巻き起こして大衆を引っ張っていく側なのだと。私はポピュリストという言葉を悪い意味で使っていません。大衆迎合と言うのは失礼な言い方だと思っています。
国政だけでなく、知事のような首長も風を起こしやすい土壌にあります。既存政党に頼らなくても、知名度を武器にわかりやすい争点を掲げて当選。大統領制と同じように、選挙で選ばれれば一気に主導権を握ることができるからです。青島幸男元都知事、横山ノック元大阪府知事、石原慎太郎元都知事らです。新党を立ち上げた橋下徹元大阪府知事も風を起こすのがうまい政治家と言えます。
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私は日本で最初のポピュリスト政治家は美濃部亮吉・元都知事だと思います。経済学者として難しい経済問題をやさしく説明するなど、テレビを通じて幅広い人気を博し、「東京ごみ戦争」の宣言などのわかりやすい言葉で都政の課題を都民に伝えました。石原氏もテレビ戦術が巧みでした。ディーゼル車の排ガス規制の際、記者会見で黒いススが入ったペットボトルを振るパフォーマンスなど、美濃部氏からずいぶんと手法を学んでいるように見えました。
ただ、政策よりも政治的なスタイルを優先しがちな政治家は、いったん逆風が吹けば、手のひらを返したようにイメージが転じてしまう。善か悪かの二元論を自ら強調するためです。テレビを利用した世論操作をてこに政局を動かす手法の先駆けとなった日本新党の細川護熙元首相も、佐川急便からの借入金問題などのスキャンダルで求心力を失い、1年も持たずに辞任に追い込まれました。
小池氏は「東京大改革」というキャッチフレーズを掲げていますが、政策の理念がまだ見えにくい。でも、それをつくっていかないと、どこかで見限られます。彼女でなければできない政策を打ち出さなければ、いつまでも風は続きません。有権者が飽きれば、風はあっという間にやんでしまいますから。(聞き手・岡戸佑樹)
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おおたけひでお 1943年生まれ。政治学者。政策決定過程や戦後保守政治を研究する。著書に「日本型ポピュリズム」「小泉純一郎 ポピュリズムの研究」など。
大嶽氏
「日本で最初のポピュリスト政治家は美濃部亮吉・元都知事だと思います」
私も同感!
そもそも
共産党の政策こそが、大衆が喜ぶ事がずらりと並べられていて、ポピュリズムの最たるものですよ!
(しかも、実現性の無い無責任なものばかり)
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