「首長が仕切る教育委員会」大阪府教育委員長・陰山英男氏(朝日新聞・耕論)

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教育委員会の改革について、2人の有識者の意見が掲載されていました。
もう一人は、愛知県立大学教授・坪井由実氏。一応読みましたが、書かれている内容に一貫性が無く、単なる批判的な評論でしたので載せませんでした…一応リンク張っておきます。

これを読むと、橋下さんが「民間人校長」に、こだわる理由が分かる気がしました。

(朝日新聞10/22付より引用)
地方の教育行政の執行権を教育委員会から首長に移す。そんな改革案が文部科学省の中央教育審議会で有力となっている。首長が強い権限を持つ意味とは何か。この改革で教育はよくなるのか。その弊害は。改めて考えてみたい。

グランドデザインは政治家で 大阪府教育委員長・陰山英男さん

 教育委員会制度を語るとき、大事なことが抜けがちです。実は、教員の人件費以外の教育予算は首長に決定権があることです。現行制度でも教育における政治の影響は大きいのです。一方、教育行政の執行者とされる教育委員は教育行政に詳しいとは限らず、しかも非常勤です。ですから、主に教員出身者で構成される教育委員会事務局が立案した施策を追認する場合が多くなりがちです。そのため事務局を統括する教育長の影響は、教委の代表である教育委員長よりも大きい場合が多い。教育の責任の所在がはっきりしないと批判される理由です。

 戦後、「教育の民主化」という文脈では教委の存在意義はありました。「レイマン・コントロール(一般人による監督)」と言われ、教育関係者ではない一般市民が政策決定に参加することで、教育行政に多様な考えを採り入れることができたからです。

 ところが昭和50(1975)年代になると、日本の社会構造は変わり、子どもを取り巻く生活環境も激変しました。それまでは各家庭で子どもは「早寝、早起き、朝ご飯(を食べる)」が当たり前でしたが、このころから「夜ふかし、朝寝坊、朝ご飯抜き」が急増します。教師は授業以前に、崩れた生活習慣を立て直すことから始めなければいけなくなりました。そうした子どもの状態は、不登校、いじめ、学力低下といった問題を招き、学校や教委が対応を迫られるようになりました。教育の専門家ではない人が集まった教委に、そうした問題に対処する能力はなく、問題が発生するたびに右往左往するばかりです。(続く)

(続き)
<首長の責任重く> 大切なのは、時代の変化に応じ、子どもがのびのびと成長できる社会を作るようなグランドデザインです。そうしたものを描くのは、まさに政治の仕事なのです。グランドデザインと予算権限を持った首長が、教育行政のプロである教育長とタッグを組めば効果的な教育施策を打ち出せます。大阪府知事時代の橋下徹氏は、府教育委員の私の提言を受け、教員の国際感覚を養うために海外視察に同行し、他の予算を1億円削って数百人規模の教員の海外研修の予算を取る決断をしました。

 この数年で、「子どもたちの学力を高めたい」と真剣に悩んで私に相談に訪れる県知事や市長が十数人います。なぜ首長かというと、子どもの成長にかかわる役所は、国レベルでは文部科学省と厚生労働省に分かれていますが、自治体レベルでは、首長が総合的に責任を負わざるを得ないからです。首長が教育について積極的に情報発信する最近の動きを見ると、近い将来、首長選挙で候補者が具体的な教育施策と有能な教育長候補を提示して競い合う時代が来ると思います。

 首長は、教育の素人ですから、学校現場や教育行政に精通した教育長が必要です。しかし、教育長は教師でも、民間でも、一般行政でも、出身がどこかは問題ではありません。重要なのは、学校や教育の実態を理解した上で、社会や経済の関連でも展望できる高度な教育行政能力を持っているということです。

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 <教育長の養成も> しかし、そんな人材はほとんど見当たりません。となると、優れた行政手腕やマネジメント能力を持ちながら教育についての知見も併せ持つ教育長を養成するシステムを構築しなければなりません。例えば、行政マンから優秀な人物を選び校長を何年か経験させる、といったようなことです。教育長や教育委員を養成する教育機関も必要でしょう。

 首長が教育行政の執行権限を握ることに対しては、「首長が人気取りのためにポピュリズム的な施策を掲げて教育現場に混乱をもたらす」といった批判があります。そうした懸念に対応するために、「拒否権」とも言うべき、首長の暴走を止める権限を教委に与えたほうがいいでしょう。

 首長の暴走を止めるのは本来、議会の仕事ですが、議会は政治家の集団なので政治的思惑から行動する心配もあります。その意味で、政治的に中立な教委の方が首長にストップをかけるのに適していると言えます。
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 かげやまひでお 58年生まれ。兵庫県内の小学校教諭、広島県尾道市立小校長を経て、06年から立命館大教授。08年から大阪府教育委員。昨年から現職。

 ◆キーワード

 <中教審の教育委員会見直し案> 現制度は、自治体の長が複数の教育委員を任命、教育委員会が教育長を任命し、教育の執行機関は教育委員会にある。中教審が中間まとめで提示した2案では、いずれも教育長の任命・罷免(ひめん)は首長がする。有力とされるA案は執行機関も首長、教育委員会は首長の諮問機関に。B案は執行機関は教育委員会のままで、教育長の指揮監督を教育委員会がする。(引用ここまで)

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