「『小さな一歩』が社会を変える」 夏野剛氏(朝日新聞・逆説進化論より)

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夏野氏が朝日新聞に寄せていた連載(逆説進化論)が終了しました。
毎回楽しみに読ませて頂いていたので残念です…

その最終回…

(3/29朝日新聞より引用)
「小さな一歩」が社会を変える (夏野剛の逆説進化論)

 人生は後戻りのできない道をひたすら歩いて行くようなもの。取り巻く環境は時々刻々と変わってゆく。壁にぶつかって、「もうだめだ」とクサっていては何も解決しない。とどまっていては変化する環境に翻弄(ほんろう)されるだけ。とにかく前へと歩を進めるしかない。

 壁にぶつかったとき、まず自分がやれることを全部やりきったかチェックしてみよう。考えられることはすべて試してみたか。わずかなツテでも、どんな小さな可能性でも、局面を打開するすべての努力をしたか。恥もプライドもかなぐり捨て、信頼できる身近な人に包み隠さずに状況を話し、意見を請うてみたか。

 その場は深刻であっても振り返ってみればたいしたことはないこと、人から見たらなんてことはない場合もよくある。やるべきことをすべてやれば、多くの場合、そこから道が見えてくる。

 それでも壁は壁のままだったらどうするか。

 思い切ってリセットするしかない。会社を辞める、遠いところへ引っ越す、独りになる。思い切って環境を変える。そして一からまた頑張る。失うものなど何もない。最初に戻るだけだ。

 これは個人だけではない。国家戦略だって同じだ。日本は人口が減少する。「もう成長できない」と諦めてはいないか。既存の制度の改革の難しさにたじろぎ、前に進む努力を怠っていないか。「特区」の中だけでもいい。改革を試行錯誤しながら、少しでも社会を進化させる努力を続けるべきなのだ。それでもダメならゼロベースから新しい社会を作ればいい。

 時にはふっと、大きなことを考えてみよう。

 地球が誕生したのは46億年前、霊長類が生まれたのが約6500万年前、そしてアフリカでヒトが登場したのが200万年前。悠久の歴史の中で私たちは生きている。とてつもなく長い間の遺伝子の連鎖の果てに一人ひとりがいる。私たちの存在こそが奇跡であり、また、今ある会社も国家も様々な偶然と僥倖(ぎょうこう)に恵まれて奇跡のように生まれたものだ。

 目の前の様々な悩みをいったん忘れ、壮大に考えてみる。ヒラ社員であっても、自分が何か動くと課や部の業績になにがしかの影響を与える。その部の業績は会社の決算に必ず影響を与える。その会社の決算は属する産業に、産業は日本経済全体に、さらには世界経済に影響を与える。一人ひとりの小さな一歩が間違いなく世界や人類の発展に何かしらの影響を与えている。それが人間社会であり、そこに私たちは属している。

 一人ひとりは今の人類の70億分の1のちっぽけな存在だが、連綿と続く進化の過程の中で生まれ、生きている。自信を持って、前を向いて歩いて行こうではないか。

夏野剛氏:慶応大政策・メディア研究科客員教授。ドコモの「iモード」を開発、ドワンゴなどIT企業取締役を兼ねる。
(引用ここまで)

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