長文ですが
気が付いたら、最後まで一気に読んでしまいました!
「売国奴に告ぐ」から社会保障制度まで、内容盛りだくさんです。
引用
中野剛志共著「売国奴に告ぐ」を読んだ。僕はTPP交渉参加に賛成だ。この議論をもって日本の歪んだ構造を少しでも正すきっかけにできれば良い。日本に不利なことは蹴れば良い。ISD条項などそのまま飲むわけにもいかない。同一ルールにするというなら日本の良いルールは通すように踏ん張れ。
それが今の日本の政治や行政にできないと言うなら、それができるような政治と行政を作るように現役世代が頑張れば良い。アメリカにやられてしまうから初めからTPPには反対だって、そういう考えもあるだろうが、そうでない考えもある。これは論理の問題ではない。ある種の政治判断だ。
このような政治判断について、中野氏はあーでもない、こーでもないと理屈をこねるので国民の心に響かない。一部ネット上で賛成してもらったことで国民の多くが支持していると錯覚している。しかも自分たちがTPP反対論を国家的に醸成し、それが大成功を収めているとの自己過信。あーあ。
これはデビューした政治家が陥る最初の罠と同じ。自分の後援会パーティーで2000名も集まれば、自分は全国民から支持されると錯覚する。その外に出れば、さっぱりなんていうのは良くある。TPP問題は権力闘争の様相を帯びている。反対論者が、逆張りでポジションを張った中野氏を担いだだけ。
売国奴に告ぐの中で、じゃあ今の日本、何をしたらいいのか?については、国債を発行して公共事業をどんどんやる。これしかなかった。あとは改革の動きを全てひっくるめて新自由主義とレッテルをはり、とにかく新自由主義はダメだ、ダメだの連呼。これだけの連呼の技術は選挙に出れば活きてくるよ。
まず景気はカネを回すこと。今の日本のシステムはカネが回るルートが硬直化している。今公共工事を増やしたところで、一般の人々にカネは回らない。経済なんて需要と供給の連鎖。そして付加価値の移動。供給を引き出す需要、需要に応えられる供給が連鎖して、カネが回る。
これは付加価値の移動であり、現代社会では効率性からマネーの移動を利用している。要するに、経済を良くするには付加価値を生まなければならないが、そこに努力を求めるかどうか。これは価値観だろう。僕は努力を求める。公共工事を増やして一時的なデフレギャップを埋めることはできるだろう。
ところが、実際の政治行政のプロセスの過程でそれがどれだけ無駄を生み、国民にカネが回らず、そして作ったモノの維持管理費でまた行政の財政が汲々とするか。実際の政策実現プロセスをしっかりと見るべきだ。国債を発行しても、国家全体でみれば資産と負債の両建てに過ぎないという論もある。
今の日本の国債が直ちに破綻するかどうかは確かに色んな議論がある。CDSの値を見ても本当に直ちにかは疑わしい。しかし、この論者はフローが硬直化することを考えていない。社会保障費は年々増額するばかり。格差是正のために教育費にカネをぶち込むにもフローがいる。
無尽蔵にカネを刷り続けることを良しとするなら別だが、そんな論者はいない。やはり国債を発行すれば償還する、格差是正のためにカネを使ったらそれは国民が負担するという考えを取る以上、ストックを両建てにすることでフローを硬直化させることには注意を払わなければならない。
僕は景気回復のために、一定のカネをどっと流すのは賛成だ。しかしそれはきちんとカネが回る社会にしなければならない。もし穴を掘って埋めるだけも構わんというなら、それなら全国民に現金を配った方がよほど公平だ。高度成長時代のように公共事業をやればカネが国全体を駆け巡る状況ではない。
景気回復のためには血(カネ)を流さなければならない。しかし血管の詰まりを正して通りを良くし、そして血そのものも栄養分たっぷりのモノを流さなければならない。今の日本で、デフレ解消のためにとにかく公共工事を!と言うのは、糞詰まりの血管に、栄養分のない血を流すようなものだ。
学者論議で困ったものは、市井の市民の暮らし、現実の経済、政策実現プロセスを知らないことだ。共著の方は中小企業診断士をされているようなのでこの辺は良くご存じかと思っていたが。カネの移動には質がある。付加価値の移動を 伴わないカネの移動と、付加価値の移動を伴うカネの移動。
要は既得権。需要に応えない供給にカネが回ることが付加価値の移動のないカネの移動。需要と供給の連鎖が生じず、国全体での活力の上昇にはつながらない。バブルがはじけた後の国挙げての公共事業のバカバカしさを見て欲しい。これで大阪府や市の財政がどれだけ苦しくなり、フローが制約されているか。
そのときの維持管理費、将来の大規模修繕費で、真に必要な社会保障、教育費にカネが回らない。そのときの供給力の落ち込みは一時的に食い止めたのかもしれないが後の伸びに繋がらなかったのも事実だ。そして真に必要な公共工事を判断するのは難しい。最後は民の事業とのバランスを考えるしかない。
また外郭団体や一部業界の仕組みから、カネが回らない。もっと付加価値を生む主体が参画すれば需要と供給の連鎖がより力強く発揮されるかもしれないのに、付加価値を生まない主体が既得権によって守られている。これを正すのは、新自由主義でもグローバリズムでもなんでもない。単なる改革だ。
中野氏は改革を聞けば、全て新自由主義!グローバリズム!と一括りにして反対を叫ぶ。大阪市営地下鉄の民営化も新自由主義だって。笑いにもならない。これは単なる経営改革だ。中野氏と共著の方、一度、地下鉄やバスの現状、その他外郭団体の天下りや随意契約の現状を検証したらどうか?
出入り業者の煙草の不始末から大規模事故を起こしたので地下での禁煙を再度徹底したにも関わらず、直後に平気で喫煙する。組合が人事介入を疑わせるようなことが横行し、地下鉄の深夜ダイヤは伸びない。給与は全国平均の4割増し。そのくせ実ハンドル時間はお粗末なくらい少ない。
人が余ったとなれば、バス専用レーン確保のために道路沿線に大量の人を繰り出し、従業員送迎の専用バスを走らせる。これで何十億の税金の投入だ。改革するのは当り前だろう。それを全部デフレ助長に繋がるから止めておけというのか?外郭団体は随意契約で何十億の仕事を確保。他の参加を許さない。
市役所の給与構造も付加価値すなわち勤務成績にかかわらず高額保障。不景気だから公務員の数を増やせ、公務員の賃金を上げろ。GDPに占める公務員の人件費の割合を一体どれくらいまで高めろと言うのか。今の割合なら、公務員の採用数増員、賃金の数パーセント増額がそれこそデフレ解消になるわけない
もちろん公務員の身分保障を外して高度の流動化を図れば、多少のバッファに使えるかもしれない。しかし今の制度のままでカウンターサイクリカルなんかになるわけがない。僕も公務員の数を何でも減らせば良いとは思っていない。しかし今は公務員の身分保障による制度の硬直化で適材適所にできない制度だ
身分保障が緩まり、需要に応じて供給体制を整える組織になれば、カウンターサイクリカルとして利用することも可能だし、必要な部署(高齢者支援・児童虐待対応など)に増員することも可能だろう。ただこれも今後はNPOが担う領域が広がるだろうが。
中野氏は改革を新自由主義・グローバリズムだと批判し、この本でも結局何の具体案の提言もなかった。農業改革については語るには時間がかかるとして何も提言せず。農家を守れ!中小企業を守れ!日本の伝統文化を守れ!アメリカに負けるな!グローバル企業に利益を搾取されるな!それだけ。
挙句の果てには、この手の論者に多いが、これまでの日本型資本主義をもう一度尊重すべきだと。学者は楽なもんだ。これでカネをもらえるのだから。同氏の主張は結局のところ現状維持。このまんまということ。社会システムは人間が作ったもの。時とともに歪みが生じる。それを変えるかそのままか。
変えれば問題が生じる。その問題を恐れて何もしないのか、それとも問題が生じればまたそれを正していくのか。これはもう価値観ですね。現実の政治・行政をやっていれば、制度の歪みに毎日ぶち当たるので、それを毎日変え続ける行動をしなければならない。それで問題が生じればまた修正。
これは新自由主義だとかグローバリズムだとか一括りにされるものではない。専門家の財務分析などを基にファクトに基いた改革案を作り、実行していく。この繰り返しを必要とするかどうか。中野氏はいらんということ。だいたい、僕の怒りは納税者の怒りだ。
中野氏は官僚になってからイギリスに留学してお勉強をたっぷりなさったらしい。これ自費で行ってるんだろうな!僕が弁護士時代に下品な言葉を発していたと非難するが、それは自営業で明日の身分保障がなかった中でやっていただけ。求められなければ即首。収入なしの環境でやっていた。
ところがこの中野氏はどうだ?経産省に入り、経産省での15年間は無駄だったと公言し、留学までしてお勉強をして、今度は京大でお勉強。きっちりと経産省に身分を置きながら。そして新自由主義の考えの奴らはバカで、まともに議論してもしょうがないからとことんバカにして嘲笑して行こうだって。
俺はこういう奴らが大っ嫌いなんだよ!やるなら身分を外して堂々を訴えろ。それか政治家に立候補しろ。京大入りも経産省のあっせんを受けたなら、そんなもの辞めちまえ。そう言う状況で国のためにという若者がどんどん出てこないと日本はダメだ。共著の方は、自営業でやっているので敬意を表します。
一人の官僚が留学するのにどれくらい費用がかかっているのかしらんが、小児難病対策も2000万円もいらなかった。ハンセン病患者のフォロー要因も400万円。塾代助成は8000万円だったかな。僕は無駄金を本当にサポートを必要としている市民に回したい。机上の論ではなく、現実の政治で。
大阪府では私立高校も無償で行けるようにした(所得制限あり)。数百億オーダーだが、これで私立を選べた子どもが劇的に増えた。障がい者雇用や、障がい者教育施設にもお金を入れたし、市長になってからも公立中学の給食や、妊婦検診助成、小児医療費助成などなど必要だと思ったところにカネを入れた。
しかし天からカネは降ってこない。制度の不断の見直しが必要。見直しをすれば当然そこで反対論は出る。外郭団体の随意契約も民間に開放することで、民間にチャンスが生じる。付加価値を生まずに既得権益化してカネをもらっているところは見直す。これをやり続けることが新自由主義か?
新自由主義だからダメだなんていう幼稚園児でも言えるような批判をするのではなく、きちんと改革案件について具体的な批判をして来い。そもそも官僚の留学制度や大学出向制度も改革すべきだろう。そのカネがあれば、どれだけの市民が助かるか。
明治維新から日本はここまでよくやってきた。今の日本の状況は世界的に見てもまだ恵まれている。相当贅沢な社会だ。この社会を維持するためにはカネがかかる。社会保障費は増大するばかりだ。国家経営は企業経営と本質は同じ。人モノカネの適正配置。ただ単純な利益は目指さない。社会的利益を目指す。
付加価値を生まないのに過分なカネが回って来ている血管の詰まりを正す。今の日本、これまで頑張りすぎて至るところに血管の詰まりがある。その詰まりを正す。そのためにはとんでもない政治エネルギーがいる。TPP論議を利用させてもらう。TPP論議に蓋をしたらそのエネルギーは生まれない。
また血の質も上げなければならない。需要と供給の連鎖。付加価値移動を伴うマネーの移動。そのためには需要をに応える供給、供給を引き出す需要を作り上げていかなければならない。それは国民に努力をもとめるしかない。中野氏は、TPPで農業がダメになる。中小企業がダメになると叫ぶ。
氏は、当該農業・中小企業を守りたいのか、それともその個人を守りたいのか、ごっちゃになっている。供給と需要の連鎖に相応しくない個人は、究極的には業を変えてもらわなくてはならない。氏が評価するスウェーデンも、人は守るが産業は守らないを徹底している。農業や中小企業はしっかり守るべき。
しかしそれは需要と供給の連鎖に乗っかることが前提だ。きちんとできる者が担えば良い。じゃあ交代を迫られた担い手は?こここそ社会保障の出番だ。職を変えられるシステムの構築だ。保護する、守ると言うのは楽だ。究極のポピュリズムだ。そのために負担をする人間がいることを忘れてはならない。
社会において相互に負担をすることは当然だ。しかし負担は青天井じゃない。ゆえに真にサポートが必要なところにカネが回る仕組みを作らなければならない。そのためには職の転換は甘受しなくてはならないだろう。改革で失業者が増えると中野氏は叫ぶ。これは都市部の雇用のミスマッチの状況をご存じか。
現代社会において求人率の高い仕事はたくさんある。そういうところに人が移ることをしっかりとサポートする。日本の血管の詰まりを正し、血の質を上げる。そこで最初のひと押しで血を流し込む。必要な公共事業はある。しかし今公共事業でデフレギャップを埋めにかかると血は身体全体を巡らない。
血管の詰まりを正すと言ってもとてつもない政治エネルギーが必要。ありとあらゆるものを使わなければならない。そのためのツールとしてTPPは有効だ。日本に不利ならノーと言えば良い。中野氏が言うように、アメリカは押し付けはしないでしょ?それならその時にノーと言えば良いだけ。
日本の不利な時にノーと言えない政治だと言うなら、そういう政治を作らなければならない。TPPぐらいでノーと言えないから、初めからTPPに不参加と言っているようでは、日本の政治はいつまでたっても良くならない。
売国奴に告ぐは面白かった。府議会、市議会で共産党が主張していることとそっくり。しかし著者はそんなこと認識もしていないだろう。資本主義や競争主義、保護主義がもうごちゃごちゃ。これだけ考えの軸がむちゃくちゃな政策論は初めて見た。まあ一部ネット支持者には受けるでしょう。
まあこう考えると、中野氏の功績も大きかったかもしれないね。幼稚な新自由主義・グローバリズム反対論。これでつまらない政策論にエンタメ性が出た。僕も社会の歪さを正し、本当にサポートしなければならないところにカネを回すために立候補した。中野氏もそこまで言うなら立候補したら良いんだ。
官僚のお勉強のための留学制度や大学出向制度をなくせば、それだけで多くの市民が救われる制度が作れる。まずそこからやったらどうだ?新自由主義などと括らずに実際に大阪市で行っている改革案件の具体的問題点の一つでも挙げてくれ。
結局全て反対、現状維持。そんな氏の考えをまとめるために留学はじめ多額の税金が使われたのかと思うと怒りが込み上げるぜ。具体的にこうしろ!と提言してくれよ。俺たち政治家はバカでそこまで知恵がないんだから。
中野氏は何の提言もないのだが、スウェーデン型の国家、ドイツ型の国家が参照になるとだけ言及している。スウェーデンの1千万人国家だったら血管の詰まりも少ないだろう。1千万人国家で分権の試みもやっている。何と言っても特定事業者は保護しないが人は保護するが徹底している。もの凄い競争社会。
僕は学者じゃないからそこまで勉強していないけど、国民の政府に対する信頼が強いから高福祉・高負担国家が成立する。ドイツは日本より人口は少なく連邦制だ。地方での責任も厳しく問われながら受益と負担の関係も日本より明確だ。ところが日本はどうだ?
もう至る所の社会制度が疲弊している。社会保障制度なんてボロボロだよ。給付ばかり充実して、これ一体だれが負担するんだ?給付を下げなければ、どこからかカネを持ってこなければならない。これが血管の詰まりを正す作業だ。日本全国で詰りまくってるだろ。大阪だけが詰まってたら、僕の認識間違い。
posted at 13:35:37
(橋下氏 twilogより)