『なぜ慰安婦が、性奴隷(sex slaves)と表現されてしまったのか?』(管理人考察)

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このコラムは、記事:6/5 橋下大阪市長 記者会見を補完する意味で書きました。良かったら併せてご覧下さい。

海外から見る慰安婦問題は、2つに分けて考えるべきだと思います。

1つは、韓国・中国の見方。

こちらは、戦時中の日本の国家責任を問うもので、
国家としての関与が有ったか、無かったというもの。

今まで、日本政府がはっきりさせてこなかった為、事あるごとに両国から非難されてきました。
日本人の中にも、両方の意見があり、忸怩たるものがありました。

橋下さんが、日本政府として明確にすべきと主張しているのも、まさにこの部分だと思います。

ここについては、これまで再三メディアに取り上げられてきましたので、みなさんご存知の部分だと思います。
なぜこの問題がこじれてしまったかは、「慰安婦」問題の理解のために(江川昭子氏)をご参照下さい。

問題は2つ目、欧米(特にアメリカ)の見方です。

なぜ、アメリカで橋下発言が、「性奴隷(sex slaves)が必要だった」と報じられたのか?

そして、なぜ、オバマ政権が橋下さんを批判し、アメリカの要人は皆会わないと言い出したのか?

結論から言うと、
アメリカでは、慰安婦問題が、民主党・共和党、両党に巧みに政治利用されているから…と言う事です。

事は、太平洋戦争までさかのぼります。
当時、日本に対し参戦した時の大統領はルーズベルト、そして原爆投下した時の大統領はトルーマンでした。
共に民主党です。あの戦争は民主党政権によって行われました。

オリーバーストーンのドキュメンタリーなどを観ると、戦後、原爆投下の必要性が問題となったことが分かります。

また、その後の調査で、日本を戦争に引きずり込む為、ルーズベルト政権が策謀していたと言う報告書や、真珠湾攻撃が行われる前に、アメリカが日本の潜水艦を攻撃していたと言う事も暴露されたりしています。
(日本がやった満州事変と変わらない感じです…)

このままでは、民主党政権がしてきた事が、非人道行為(侵略戦争)に見られてしまう。
民主党としては、太平洋戦争と原爆投下を、正当化しなければとの思いが常にあったと思われます。

その様な中、(その辺りを承知の上で)韓国系や中国系の米国議会でのロビー活動が行われてきました。

1993年に、河野談話は出されますが、アメリカでは特に目立った動きはなかったようです。

その後、中国系団体の支援を受けていたとされるマイク・ホンダ氏(民主党下院議員)が、
「日本政府への慰安婦に対する謝罪要求決議案」を、2001年以来数回(3回?)提出されるも廃案になっていました。
(1995~2007年まで、下院は共和党が与党だった)

しかし、2007年、3つの変化が起きます。

1つ目、
1月下院の与党が民主党になった。
(1月末マイク・ホンダ氏が、再び決議案を提出)

2つ目、
3月安倍首相が閣議で、
「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示す記述は見当たらなかった」
とする答弁書を決定。
この発言を受けて、米国議会で決議案に対する議論が燃え上がってしまう。

1993年の河野談話は、日本が自ら過ちを認めた様なものですから、
民主党にとって、先の大戦そして原爆投下の正当性を、補完する大事な証拠の1つです。
それがひっくり返されたら都合が悪い訳です。

その後、安倍首相は、当初の強硬姿勢を修正した発言をし、事態を収拾しようとします。

しかし、アメリカ世論は、決議案の採決を後押しする状態にありました。

それが、3つ目、
この年、米英で、奴隷制や先住民に対する迫害を反省する動きが広がった。
アメリカの幾つかの州で、奴隷制と先住民の迫害を「深く遺憾とする決議」を採択。
また、英国教会は、教会が奴隷を所有した過去を反省。ブレア首相も、新聞に寄稿し「深く恥じる」と表明した。

この動きが、「日本政府への慰安婦に対する謝罪要求決議案」(いわゆるアメリカ合衆国下院121号決議)を、
安倍首相の対応にも拘らず、採決する流れを決定付けたと思います。

かつて、アメリカは奴隷制度を行い
アフリカ大陸から、黒人を強制的にもしくは人身売買で連れてきていました。
アメリカの覆い隠したい暗い歴史です。

(追記:どのようなものだったのか?「ルーツ」と言うテレビドラマを観るとイメージできると思います。もちろんドラマですから脚色・演出はあると思いますが、大反響を巻き起こし社会現象になり、多くのアメリカ人がテレビの釘付けになりました。今のアメリカ人にそのイメージが強く焼き付いているといると思います。その後日本でも放映され大反響でした。2016年にリメイク版が作られました)

その奴隷を解放したのは、ご存知、16代大統領エイブラハム・リンカーンです。
共和党初の大統領です。
奴隷解放は、共和党にとって輝かしい党の功績なのです。

慰安婦決議案を採決したい民主党としては、
奴隷制度をリンクさせれば、共和党も賛同せざる負えないと踏んだのではないでしょうか?

その思惑通り、共和党議員の賛成を受け、圧倒的多数で可決されます。

当時支持率の低かった共和党ブッシュ政権としても、世論に配慮せざるえない事情もあったと思われます。

これによって、アメリカにおける慰安婦問題は、
女性(売春婦)を奴隷制度の様に連れてきた」問題、と全米で認識されたのではないでしょうか。

ですので、アメリカが慰安婦問題でポイントにしているのは、
国、民間に拘らず、「かつての奴隷制度の様な事を日本が行っていたか」が重要なのです。

その他の色々指摘されている非人道的行為の詳細(真意のハッキリしないクマラスワミ報告書など)は、実はアメリカにとって、「どうでもいい」とは言いすぎですが、さして重要でないと思います。

私たちからすれば、性奴隷と表現されれば、拘束して性のおもちゃの様に扱ったイメージを想像しますが、決議文(121号)の中では、「sexual slavery」(性的奴隷制度)と書かれていますので、
そういった意味合いでは言っているのではないと言う事を、理解しないといけないと思います。

ここまで知ると、5/27TVタックル(16分付近)の、記者会見で橋下さんがおかしいと指摘したジェームス・スキナー氏(モルモン教徒なので恐らく共和党支持者)が、なぜ、「親が売ったとしても、奴隷を買った事にかわりが無い。業者がやったんだから国に責任が無いとか一緒(関係ない)」と主張したのかが、理解出来る思います。

私の知り合いのアメリカ人(50代白人男性プロテスタント来日5年・共和党支持)も、
私が「sex slaveは言い過ぎでは?」と聞けば、「かつての奴隷制度と一緒、どこが違うんだ!」声を荒げて答えました。
なぜ、その様な答えが返って来たのか、その時は理解出来ませんが、ここまで知って納得しました。

残念ながら、橋下さんが国家の関与にこだわっても、アメリカとは議論が噛み合わないのです。
逆に今回の報道で、奴隷制度を容認する人間の様に映ってしまったかもしれません。
ここが、オバマ政権が橋下さんを批判し、アメリカの要人は皆会わないと言い出した理由だと思います。
他国を非難して、日本のした事を正当化しようとしてる様に見えたから、ではないと思います。

その知り合いのアメリカ人に、橋下さんの見解(英文)を読んでもらいましたが、
多少は納得したようですが、腑に落ちなかった様です。
今思えば、奴隷制度に関して言及してなかったので、その部分かなと思います。

話を戻します。(121号)決議後、安倍首相もしくは日本政府は謝罪したのか?
日本政府は静観し反応しませんでした。

時に、アメリカ大統領はブッシュ(共和党)でしたので、この問題は重要視していなかったか、
ねじれ議会での民主党主導の決議に距離を置きたかったのかもしれません。
アメリカでの議論も時間ともに冷めていったと思われます。
(日本政府の対応は、こうなる事を計算していたのか?幸いそうなったのか?かは分かりません)

ただ韓国人団体は、韓国人が多く居住する地域を中心に、追慕碑を建設していく事を決めました。

そして、時は流れて、2009年民主党のオバマ大統領が誕生。
国務長官(日本で言う外務大臣)は、ヒラリー・クリントン(もちろん民主党)に。

2009年、オバマ大統領が来日しました。
核なき世界を提唱した彼でさえ、広島は訪れなかったですし、原爆投下の謝罪もありませんでした。
本人にその様な思いはあったかもしれませんが、党の歴史に配慮しての対応だったと思います。

元在沖縄総領事ケヴィン・メア氏(民主党員)が、番組(6/2 たかじんのそこまでいって委員会)で、
平然と「原爆は必要だった」と言うのも、(日本人としては、受け入れがたいですが…)立場的には当然の発言と理解出来ます。

余談ですが、2009年に行われた米世論調査。

    米キニピアック大(コネティカット州)は4日、第2次大戦末期の米軍による広島、長崎への原爆投下について、米国内で61%が「正しかった」と回答し「間違っていた」は22%だったとの世論調査結果を発表した。

    それによると、党派別では「正しかった」は共和党支持者の74%で、民主党支持者の49%を大きく上回った。
    「間違っていた」は、共和党13%、民主党29%だった。

    年齢別に見ると「正しかった」は55歳以上が73%だったが、
    35~54歳が60%、18~34歳が50%と、年齢が下がるほど原爆投下への支持は低下。

    男女別では「正しかった」は男性72%、女性51%だった。

    同大のピーター・ブラウン氏は「第2次大戦の恐怖を記憶している有権者は(原爆投下の決定を)圧倒的に支持するが、冷戦時代に核の恐怖の中で育った世代など、若くなるにつれて支持が落ちている」と分析している。
    調査は7月27日~8月3日、全米の有権者2409人を対象に実施した。


2011年、下院は共和党が与党になり、ブッシュ政権とは逆ねじれが発生。
2012年、ヒラリー国務長官が、慰安婦の表現を(comfort women)から、強制された性奴隷(enforced sex slaves)を使う様に指示との報道(これについては信憑性が無い)。

もし本当であれば、女性層の強い支持があった彼女、女性へのアピールと、下院が万が一、あの議決をひっくり返さないように「奴隷」と言う言葉を強調した?とも想像できます。

3月に安倍首相が訪米しましたが、これまでの経緯を考えれば、
民主党のオバマ大統領、経緯を考えると、笑顔で迎える訳には行かない訳で、複雑な表情が多かったのも理解出来ます。

5月、安倍政権で河野談話の見直しをしない事を発表。
しかしこれ、2007年の件があったから出来た「したたか外交」かもしれません。

訪米するまでは、強気な発言をしていた安倍首相…

しかし、訪米時には、一切その話題は出しませんでしたが、
TPPでは、オバマ大統領に日本の要求を認める発言をさせました。

その後、世界から非難もされた日本の金融緩和についても、アメリカは容認の姿勢をとりました。
4月、ヘーゲル国務長官に、尖閣諸島について「日本の施政権下にあり、よって日米安全保障条約の適用範囲内にある」と述べさせました。

その後、ロシア訪問で北方領土問題を進展させますが、アメリカは横槍を入れてきませんでした。恐らく事前に了承を取り付けていたんでしょう。
そして、米シェールガスも、(FTAを締結していない)日本に輸出してもらえる事になりました。

河野談話見直しを引っ込めるのと引き換えに、これらすべてとは言いませんが、アメリカに飲ませたのではないのでしょうか?

現在、下院は共和党が与党ですから、オバマ政権は厳しい議会運営を強いられています。
安倍首相が訪米後、見直しをやめれば、オバマにしてみれば民主党の大統領としてのメンツがたつと言えると思います。
もし出来なければ、議会で厳しく追求されたかもしれません。

2007年の事と、アメリカ議会のねじれを巧みに利用したリベンジ外交だったのではないでしょうか?
(オバマの複雑な表情は、実はこれが原因!?)

しかし、その安倍政権の発表後、すぐ、橋下さんが、河野談話見直しを主張したんですから、
アメリカは見過ごせなかったと想像できます。

今回の安倍外交が私の想像通りなら、
今後も続くと思われる米民主党政権を考えれば、「河野談話見直し」は、対米外交カードになる可能性があるということです。

もし、橋下さんがその辺りを想定して、あの報道後の対応していたとすれば…

最後に、この記事を紹介したいと思います。
朝日新聞の読者投稿欄「声」に載ったものです。(まさかここまでは捏造してないでしょう…)

(引用)
開業医 渡辺佳夫(津市 62)

かつて、太平洋戦争に軍医として従軍していた先輩医師から従軍慰安婦について次のように聞かされた。

「戦場の慰安婦のことは君のような戦後生まれには分からんだろう。フィリピンに居た時、夜、小屋の前に数十人の男たちが列を作って待っているんだ。流れ作業のようだった」「女性たちは可哀想だった。局部はただれ、1カ月ほど休むよう診断したが、少し回復すると小屋に戻された」

先輩医師は既に他界しており、詳細を知ることはできない。だが、生きていたら、きっと次のように説明してくれたと思う。

「明日の命も分からん男たちと同様、彼女たちも戦争の最前線にいたんだ。あの夜の空疎な光景は戦争の一断面に過ぎない。おまえに戦争で死んでいかなければならなかった若者たちの気持ちが分かってたまるか。だけどな、戦争の残酷さ、むなしさ、不条理から絶対に目をそらすな。それが戦争の抑止力になる」と。 (朝日新聞 6/5)

日本にもあの戦争を知る方々が、まだまだいらっしゃいます。
でも、殆どの方は、あの時の事は語りたくないでしょう…
語れば、あの頃の悪夢を思い出す事にもなるでしょう。
戦死した仲間や自身の名誉を、傷つける事になるかもしれません。

しかし、命のある間に真実を語って欲しい。
私たちの世代に、伝えて欲しい。
もしかすると、慰安婦の事についても、悲惨な状況が語られるかもしれません。

あの戦争で日本人は何をしたのか?
1つでも多くの真実を自ら明らかにしていき、
目を背けずに、向き合わなければいけないと思います。

そして、反省すべきは反省し、
その記憶を心に刻まなければならないのだと思います。

「憲法に軍隊を持たない」と書いてある事が、平和を守るのではなく、
この取り組みを続ける事が、真に平和を守る為に必要な事だと思います。

慰安婦の事についても、日本人自らの手で事実を明らかにする努力をし、
政治的に選別せずに、謝罪すべき点が出て来れば、素直に謝罪する。

これをやれば、韓国・中国の思う壺だという方もいるでしょう。

しかし、日本がこれをやらないから、
世界から本当に反省しているのか、今でも懐疑的に見られてしまうのだと思います。

これまで書いた事と矛盾していると思われるかもしれませんが、
他国の指摘に過度に反応しないで、日本が出来るやり方で戦争を総括して未来へ進むべきと考えます。

長々と拙い文章をお読み頂き、ありがとうございました。

私の見聞きした限られた情報を元に書いたものなので、違っている部分もあるかもしれません。ご了承下さい。
その他、この内容にまつわる情報等あれば、コメントにてお知らせ頂けると有り難いです。

今回は、あの当時、アメリカ人が日本人に持っていたであろう差別意識については書きませんでした。
まあ、日本人も国民差別をしてましたからね…

PS.今回改めてネットの便利さを実感しました。
これだけの内容を調べるのに、半日ぐらいで済みました。
もしなかったら…数ヶ月掛かったかもしれないですね…

ブログ「弁理士の日々」の、記事:「従軍慰安婦問題」を参考にさせて頂きました。

コメント

  1. ichi より:

    SECRET: 0
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    興味深く読ませていただきました。紹介記事にあるような事を想像するだけでも胸が締め付けられるような衝動に駆られます。

    私も管理人さまと同じように橋下さんを応援していますが、今回ばかりは一筋縄に国民から理解が得られるものではない、と思われます。

    橋下さんは慰安婦問題に対してとても大事な問題提起をされましたが「国家の意思として拉致し人身売買したのかどうか」の厳然たる事実確認は残念ながら永遠にできません。
    言い換えればゴールがないのです。

    細かい証言や状況証拠などからの事実認定という、気の遠くなるような戦いは歴史学者や専門家に任せて、橋下さんにはこの問題がこれ以上白黒はっきりできない旨、ご自身で国内外に報告され他の重要案件に注力頂きたいと切に願っております。

    真剣に問題提起をされただけでも、政治家として最大限の評価に値するものと思います。

    ただゴールがない以上、どんなに説明を尽くしても解決しませんので今後もこだわり続けることは、絶対に得策ではありません。

  2. 誰か橋下徹さんを止められないのか

    橋下徹大阪市長の従軍慰安婦発言が止まりません。彼が発言すればするほど、状況は悪くなり、世界中から顰蹙を買うことは必定であり、安倍政権に飛び火して日本の評判が悪化する危険…

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