【大阪市改革が進まない本当の理由】上山信一氏連続ツイートまとめ

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上山信一氏:慶應義塾大学総合政策学部教授、経営コンサルタント。
大阪府特別顧問及び大阪市特別顧問、愛知県政策顧問。

「橋下市長出直し選と大阪市改革についての解説」として昨日から今日に掛けて連続ツイートしたものをまとめました。
上山氏ツイッターhttps://twitter.com/ShinichiUeyama
(3/5元ツイートに合わせて訂正しました。)

(引用)
橋下大阪市長が辞任し、再出馬するというニュースが全国を駆け巡っている。これに対して、市議会の既成政党は、自民党から共産党までが口をそろえ「候補者は出さない」という。マスコミ論調は、双方に対して批判的だ。

橋下氏に対しては、「(どうせ再選だから)6億円もかけた選挙は無駄」「改革に反対する議会がガンというが、市長が辞めても議会勢力は変わらない」と批判。一方、既成政党に対しては「候補者を立てずにアンチ橋下を主張するのは不見識」「不戦敗を認めるなら橋下と協議しろ」といった具合である。

全国を見渡すと、首長が、今後の改革の是非を住民に問うために辞職、再選を目指すという事例は多くない(基地問題の沖縄、名古屋市の河村市長など少数)。なぜなら議会とは是々非々の協議で実をとったほうがいい。議会も首長が再選して復活すると立場が弱くなり、自分の選挙が危うくなりかねない。

だから、ふつうはそこまでいかない。 しかし、大阪市では2005年、前任の関市長も同じ手法をとって改革に対する議会の反発を退けた。それでもその次の07年の選挙では、労組の支援を受けた平松市長が選ばれ、地下鉄民営化などの改革案を掲げた関氏は敗れた。

なぜ、こうも大阪市議会は市長と対立するのか?また、なぜ大阪では、抜本改革を切望する市長が出現し、ここまで激しく既存政党と対立するのか?また、都構想は、それほどまでに重要なものなのか?  答えは単純ではない。しかし大阪市は筆者の地元である。私はそこの気風も風土も知り尽くしている。(続く…)

(関連記事)【市民の質問も熱い】大阪都構想・阿倍野区タウンミーティング(橋下市長・松井知事) 動画

(続き)
大阪市改革が進まない原因は、市議会の選挙区が24の中選挙区に分かれているからだ。都構想では24区を5区に集約する。既存政党の激しい反発はこの辺に由来するのではないか。 各区の人口は約6万人から約20万人弱。議員は各区で2から6人選ばれる。一部の区ではわずか4千票ほどで当選する。

大阪市は都会にもかかわらず区民のごく一部の支持で当選できる珍しい自治体である。当落線上の候補者は、特定団体や地元の有力者の支持で票を固めて当選しようとする。彼らにとって都構想で選挙区が集約されるのは不安だ。 なぜなら市議会がなくなり府議会と統合されると市議枠の定数は減る。

おまけに維新の会は府議会の定数を強行採決してまで2割削減した前代未聞の政党である。そんな連中に選挙区の設計を任せるわけにはいかない?そして区長と区議会が公選で選ばれると地元への利益配分の仕事がなくなる? かくして既存政党は自民から共産までこぞって都構想に反対するのではないか。

しかし行革や二重行政の打破を掲げた都構想には大義がある。頭ごなしに否定できない。そこで「もう少し検討しよう」といい続けた。「そのうち橋下はいなくなる」こんなところが既存政党の本音ではないか(もちろん筆者の推測でしかない。しかし多くの記者、財界人、行政幹部が私の仮説に同意する)。

市議会の既成政党は、おもな改革案件に対しても軒並み反対する。  たとえば、① 地下鉄民営化 ② バスの合理化、民営化 ③ 市立病院の独立行政法人化 ④ 大阪府立大学と大阪市立大学の統合と再編 ⑤ 府立公衆衛生研究所と市立環境科学研究所の統合と再編 ⑥ 水道民営化 などである。

要するに「民間に仕事を委ね公務員を減らす」「府市で重複する仕事を整理」といった抜本改革には反対。「大阪市役所の組織を守りたい」というスタンスだ。大阪市の組織が小さくなり、民営化されて市役所とは別法人になると個別の事業や予算に口出し余地が小さくなる。

地元の支持者からみてわかりやすい地下鉄、バス、病院などのサービスのあり方も議員の手の届かないところにいってしまうだろう。そういう焦りがあるのではないか。そうした気持ちはわからなくもない。しかし大義の前にはそうした私心を捨ててこそ議員ではないか。

抵抗勢力に改革する側が浴びせる言葉に「タイタニック号の上の椅子並べ」というのがある。「船はもうすぐ氷山にあたる。回避が最優先なのに甲板で椅子を並べてどうする」という揶揄である。今の大阪市議会の姿だ。だが、彼らにしてみれば、状況認識の違いでしかない。危機感が無いのだ

既存政党の議員たちは「大阪市役所にはまだまだ財政的な余裕があり、府との事業統合のようなプライドを損なうことをやる必要はない」と考える。しかも地元の支持者は「市内の辺境地域に地下鉄を伸ばせ」と言う。こまごました支持者の要望をまとめて市役所にぶつけるのが自分たちの仕事と考えている

そもそも橋下がいう「子供たちの世代のため」とか「アジアの都市間競争」「財政再建」などは既存政党の身の周りの高齢の支持者の関心事でない。それでは次の選挙に勝てない・・彼らは、既得権益勢力だけが頼りである。だから、大阪維新の会と彼らの対立はいっこうに収まらない。

大阪市議会の現状は第3者として見るといやになる。だから東京のマスコミは批判し、識者もこぞって「市長と議員がよく対話しろ」と批評する。 だが、案外なのは旧自治省OBたちの意見。彼らは「大阪市は難治の土地」だそうだ。とりわけ市議会。だから大阪は市長選挙が頻繁に劇的に起こるという

どうやら大阪市がさえない原因は、市役所、いや市長に改革をさせない市議会にある気がする。都構想の是非は、選挙区のあり方を巡る権力闘争でもある。そしてこれは既存の地方政治の秩序を覆す一種の革命運動である。 だが、そもそも革命はきちんとした手順を踏んで起こるものでない。だからもめる

既存秩序を破壊するのが革命だ。大阪維新の会はそういう意味で革命政党だ。彼らの手法は斬新だ。府議会で過半数を得るや定数2割削減し、市会議員が市役所解体を叫ぶ。知事が辞任し市長になる。W選で圧勝し知事と市長を同時に獲得したかと思えば、いつの間にか国政政党まで“従えてしまった。

だから、大阪維新の会は、既存政党から嫌われ憎まれる。都構想の実現は、既存政党にとって悪夢に見え、議員たちが都構想を可決するのはありえないのではないか? 今の日本で武力による革命はありえない。だとすれば大阪市議会選挙で反対派が過半数を割らない限り、改革も革命も全く進まない。

改革を実現するためにどうするか?いまさら対話なんてありえない。普通でない手段でもって議会の議席数を変えるしかない。来春の統一地方選が最大かつ唯一のチャンス。そこに向けて今年もまた(8年ぶりだが)改革派の大阪市長は辞任した。

8年前、関市長は辞任し、改革に賛成か市民に信を問うた。2年後、関氏は再選を目指すが落選し政界を去った。だが次の世代が代わりに出てきた。それが橋下氏である。歴史は繰返す。東京の評論家はいろいろ批判する。だが難治の土地の政治を変え都市を再生させる主役は市長しかいない。

もうおわかりだろう。橋下徹はきわめて全うな大阪市長だ。 大阪市では抜本改革しようとする市長は必ず既存政党と対立する。関氏も橋下氏も市民に改革の是非を問うため辞任した。彼らは憤死をも辞さない。今回の辞任は、真の改革者、ホンモノの市長が示す「品格ある覚悟」の発露である。
(上山信一氏ツイッターより)

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